娘のアラレはなぜ場面緘黙(ばめんかんもく:家では話せるのに特定の状況では話せない状態)になってしまったのでしょうか?
アラレが「かんもくガール」だと分かった時、自分のせいなのではという考えに取りつかれました。「母親である私の愛情が足りないからなのでは」と。
でも、「そうではないのだ」と今は納得しています。なぜ納得できたのかといいますと、場面緘黙症について、学ぶことができたからなのです。
診断までの我が家の状況
思い返すと、場面緘黙の症状が出てきたころの私は、仕事のストレスでいつもピリピリしていました。
プレッシャーの大きい職場に勤めていて、家でもその緊張感を上手く抜くことができずに、張りつめていました
仕事と家事と育児のフル回転で毎日いっぱいいっぱいになり、夫にも八つ当たり気味で、大変ご迷惑をおかけしたのを覚えています(苦笑)
元々、物事を同時に進めることや、忙しく過ごすことが苦手な性分なのに、「私が頑張らなければ」という謎の使命感にかられてしまっていたのです(汗)
アラレはどうしていたか、といいますと、そんな余裕のない私の様子を、ただただ不安に感じていたのではないかと思います。
子どもって、親の気持ちを感じとる力をすごく持っていますよね。アラレの小さな心の中に、「ママがなんだかしんどそう」という不安を植えつけてしまって、あの時はごめんよ…。
それに加えて、このころ「引っ越し」という一大イベントもありましたので、3歳の、繊細なタイプのアラレにはいろいろと大変だっただろうな、と感じます。
とてもバタバタしていたあの頃、アラレへの愛情が不足してしまっていたのでしょうか…。
なぜ場面緘黙になったのか
場面緘黙症のケースはさまざまなので、「これが場面緘黙の原因です!」とは一概には言えないと思うんです。
そこを理解した上で、それでも場面緘黙の原因について深く掘り下げたいなと、悩んでいた私は思ったのでした。その時に学んだことを、今回まとめてみました。
アメリカの緘黙児支援で有名なエリザ・シポンブラム博士が、場面緘黙グループ小児期不安ネットワーク(SMG~CAN)の公式サイトでFAQに答えている内容(英語のサイトです)と、それを日本語に翻訳してくださっているかんもくネットの資料を参考にしています。
日本の子どもの状況に合っていないところもあるかもですが、ご容赦くださいませ。
不安になりやすい遺伝的な傾向
場面緘黙の症状がある子どもたちのうちの多くには、不安になりやすい遺伝的な傾向があるそうです。
こうした子どもたちは、家族の中の誰かから不安になりやすい傾向を遺伝的に受け継いでいるため、おそらく不安に陥りやすいということだそうです。
不安のあらわれとしてみせる行動
- 親から離れるのが難しい
- すぐに機嫌が悪くなる
- 親にくっつきたがる
- 融通がきかない
- 睡眠に問題がある
- すぐにかんしゃくを起こしたり泣いたりする
- 乳児期から極端に恥ずかしがり屋
ギクギクギク!
私も夫も、とても不安な気持ちになりやすいタイプです。アラレは不安のサラブレットだったのですね。ごめんよ、アラレ…。
でもこればっかりは気質の問題なので、謝っても仕方がありません。親子ともども、たくましく生き抜いていく術を磨いていこうではありませんか!
園や学校で示す症状
そうした子どもたちが、園や学校などで社会と交流しはじめる年齢になると、会話やコミュニケーションについて絶え間ない不安を感じるそうです。
- 凍りついたように動かなくなる
- 働きかけても反応がなくなる
- 姿勢がこわばる
- 無表情になる
- 笑顔を見せなくなる
- 緘黙症状を示す
「内向的な気質」を持っている子どもたち
研究によって、世の中には、生まれつき「内向的な気質」を持っている子どもがいることが明らかになっているそうです。
「内向的な気質」とは?
アメリカの発達心理学者、ジェローム・ケーガン博士によって定義された、子どもの気質のタイプです。
「内向的な気質」の性質として、主に次のものがあげられています。
- 他人に対して慎重な態度をとる
- 目立つことを嫌う
- 新しい状況になじむのに時間がかかる
「内向的な気質」の子どもたちはそうではない子どもに比べて、赤ちゃんの時から、慣れない状況で不安感を持ちやすく、慎重になりがちなのだそうです。
このことから、場面緘黙の子どものうち、多くの子どもが、この生まれつき「内向的な気質」の持ち主なのではないかと考えられているそうです。
場面緘黙の子どもの脳内で起こっていること
脳の中には、扁桃体(へんとうたい)と呼ばれるアーモンド形の部位があります。
扁桃体は、「危険」に反応するところです。危険のシグナルを受け取って、処理をし、自分の身を守るような反応を引き起こします。
場面緘黙の子どもたちは、この扁桃体が働き者で、危険のシグナルを受け取りやすいのではないかと考えられているそうです。
脳が「危険だー!わ-!」と反応しているので、怖くなったり、心臓がドキドキしたり、手の平に汗をかいてしまったり、その場から逃げ出したくなったりするのです。
場面緘黙の子どもたちは、自分が話すことを期待された時に起こる、この「えらいこっちゃ!大変だ!」な感覚をうまく処理することができないために、緘黙となるそうです。
話そうとするともっとドキドキします。でも受け答えをしない時なら、この圧迫感から逃れて、恐怖を感じないで安心していられます。
危険のシグナルに反応しないために、話さないでいることが習慣になるのです。
発症に影響するその他の要因
ここまでお話しした、遺伝的なこと、気質のこと、脳で起こっていることの他にも、場面緘黙の発症に影響する要因があると考えられているそうです。
- バイリンガル環境
- 言語能力に問題を持つケース
この2つです。
しかしこの場合にも、「不安」というものが根本的な原因であることには変わりありません。
このような、バイリンガル環境にある子どもや言語に問題を持つ子どもは、自分の話し方がよけいに気になります。そのため、「他の人からどう思われるかな」という不安が増してしまうのではないかと考えられるそうです。
ただ、これらの要因は、おそらくはプラスアルファなものなのだそうです。
つまり、子どもが不安に対する遺伝的リスクを持っている場合、バイリンガル環境や話し言葉の問題がそこにプラスされると、その要素が加わった分だけ、場面緘黙になる可能性がより高まるのだそうです。
虐待や、ネグレクト、愛情不足などの家庭的要因は原因ではない
場面緘黙の原因が、虐待や、ネグレクト、トラウマ(心的外傷)と関係しているという学術的証拠は出されていないのだそうです。
日本では、場面緘黙は本人の甘えやわがままであるととらえられてきました。
また、両親や祖父母による甘やかしや溺愛、過干渉、または愛情不足など、家庭に原因があるという誤解が広まり、本人や家族が傷つくということがありました。
でも、そんな学術的証拠は出されていません。
虐待や溺愛、過干渉、愛情不足などは原因ではないのです。
冷静に悩んでいこうと思えた
こんなに長い記事を読んでくださってありがとうございます。大変でしたでしょう?(汗)
記事の冒頭で、「娘のアラレが場面緘黙になったのは自分の愛情不足のせい?」と悩んだことをお話ししましたが、場面緘黙について勉強した今は、そういう自責の気持ちはなくなりました。
アラレの場面緘黙がきっかけとなり、やみくもに悩むのではなく、しっかりと情報を淘汰して、冷静に悩むたくましさを得られたような気がします。ありがとう、アラレ!
できることを少しずつしていって、アラレのいいところを伸ばしてあげたいな。今はそんなふうに考えています。
そのために挑戦していること、心がけていることなど、今後このブログで紹介していきたいなと思いますので、よかったらお付き合いくださいね。
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